青森のち三十四歳の涙
青森のち三十四歳の涙

青森のち三十四歳の涙

2019年5月25日 フェリーから八戸へ降り立ち、片側1車線の道沿いを進む。

久しぶりの本州、北海道での快適ツーリングに日和っていた自分の目を覚まさせるかのように信号が多い。

勿論都会近郊に比べれば圧倒的に少ないのだが

北海道街道の素敵さ、快適さを舐めてはいけない。

降り立って2時間程度で北海道に帰りたくてしょうがなかったことを覚えている。

とかく奥入瀬渓流を目指し南下。

本来は十和田湖、十和田神社を目指していたが、奥入瀬渓流の休憩所?にて中国人の方に

コーヒーの買い方や日本のおすすめポイントを中国語で聞かれ、

全然わかんねえからボディランゲージとメモで対応してたり

往復10キロぐらい渓流沿いを歩いてたらスケジュールが狂ったりしたので断念。

日の入りまでに到着できるよう、予定していた岩手にあるキャンプ場へ向かうことにした。

この判断は人生の中でも最も失敗かつ最もベストの判断だったと思う。

スケジュールを変更したにもかかわらず、日の入り前に間に合わず暗くなってしまった。

大きな国道をひた走り続けていたが、突如グーグルが国道を離れるようルート変更を要求。

国道を降りたとたんに景色がうら寂しくなった。

不安なまでに暗い市道を進み、光が見えない人家をかき分け

街灯の存在しない山道を1時間ほど走った先に真っ暗のキャンプ場と何故か薄暗いホテルと

暗くてよく見えないものの恐らく崖が目に入った。

この段階でどちゃくそ怖かった。

キャンプサイトにも当然のように人気も光もなく、電話にて事前に使用許可は頂いていたが管理棟も閉まっている。

今からここにテントを立て、ここに寝るのか。

真面目に怖くて、ちょっと涙が出た。

恥を忍んで予定を再変更。せめて少しでも人気のある併設のホテルに泊めてもらおうと思い、

18時前後にもかかわらずなぜか薄暗いフロントへ赴き、うつむき気味のフロントマンへ声をかける。

「こんばんは」

「いらっしゃいませ」

「突然で申し訳ありませんが、当日素泊まりでチェックインはできま

「満室です」せんか」

セリフをかぶしてきた。

自分の前職はホテルマンであり、予約をメインで担当していた。

平日の夜、駐車場を見る限り全体の10%程度の使用率。

満室のわけねえべさ。

「あの、アメニティとか布団とか案内も夕朝食もいらなくて、前金で二人分払うつもりなんですが空室はあり

「満室です。」ませんか」

ニコリともせず。まんじりともせず。

もう限界だった。

怪しい客だと思われての塩対応なのか、やる気のないフロントマンの仕事増やしたくない欲からの断言なのか

そんなことはもうどうでもよかった。

人気のない道、町、山、キャンプのリーチの中、薄暗いフロントで目線も併せない全力の拒絶。

なんかもうほんとに心から怖くてバイクで逃走した。

今でも覚えていますとも。18:30に岩手の無料高速を爆走したこと。

既に300km近くバイクに跨り体も心もくたくただったが、

せめて光と人と寄り添える場所へ行こう。

何なら夜通し走って関東までいこうか。

雨も降っていないのにヘルメットの中で視界がゆがんでいた。

結果、21時前ぐらいに煌々と光るローソンに到着。

人に会えた安心感を伴ったLチキは鬼のようにうまかった。

そこのバイトの兄さんに近くのホテルルートインを教えて頂き、

きちんとウォークインでご対応いただいたのち泥のように眠った。

プラスチックボトルは既に無くなっていた。

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